労働基準法について学ぶ ⑤労働時間・休憩

労働時間・休憩

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間であり、拘束時間から休憩時間を除いた時間のことを指します。

労働時間には大きく分けて「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類があります。

法定労働時間

法定労働時間は労働基準法32条で定められた労働時間のことです。

原則として1日:8時間(休憩時間を除く)、週40時間を上限とし、使用者はこれを超えて労働者に労働させることはできません。

使用者は、法定労働時間を限度に1日及び週の所定労働時間を定めなければなりません。

所定労働時間

使用者が契約で定める労働時間を指します。

就業規則や雇用契約書に記載されている始業から終業までの時間から休憩時間を差し引くことで算出されます。

前述の通り、原則として使用者は法定労働時間を超えて所定労働時間を定めることはできません。

休憩時間

休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間です。

  • 労働時間が6時間を超える場合:45分以上
  • 労働時間が8時間御超える場合:60分以上

使用者は上記の基準に基づき休憩時間を与えなければなりません。

休憩時間は、労働の途中で、一斉に与え、自由利用が原則です。(休憩時間の3原則)

事業外みなし労働時間

事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務に従事する場合の労働時間の考え方について定めたものです。

何人かのグループで事業場外の業務に従事し、メンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合や機器により随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働する場合などはこれに該当しません。

また、事業場外で労働し、使用者がその労働時間を把握できない場合は、原則所定労働時間を労働時間とみなします。

しょていろうどうじかんをこえて事業場外で労働することが必要な場合は、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」または、「労使協定で定めた時間」労働したものとみなします。

ここで気になるのが、近年はスタンダードとなりつつある在宅勤務について

この「事業外みなし労働時間」の対象となるのでしょうか?

在宅勤務の場合、以下の要件がすべて満たされる場合は適用されます。

  1. 業務が自宅で行われること
  2. 業務に使用する通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態(指示があった場合に即応しなければならない状態)におかなくていいこと
  3. 業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

裁量労働制

裁量労働制とは、業務の性質上その遂行手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示を出すのではなく、実際の労働時間とはかかわりなく労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度のことです。

裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型裁量労働制

業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、その業務の遂行手段及び時間配分の決定に関し使用者が具体的な指示をすることが困難な業務として、厚生労働省で定められる業務が対象となります。

具体的な対象業務
新商品の研究開発業務SE業務出版等の取材・編集業務デザイナー業務
プロデューサー・ディレクター業務コピーライター業務システムコンサルタント業務インテリアコーディネーター業務
ゲーム用ソフトウェアの創作業務証券アナリスト業務金融商品開発業務大学での教授研究業務(主として研究に従事する者に限る)
公認会計士業務弁護士業務建築士業務不動産鑑定士業務
弁理士業務税理士業務中小企業診断士業務

ただし、数人でプロジェクトチームなどを組んで開発業務を行っている場合は、チーフの管理下で業務遂行・時間配分が行われている者やプロジェクト内で業務に付随する雑用・清掃等のみを行う者に関しては当該制度の対象外となります。

その他、延久開発に従事する者を補助する助手なども同様になります。

企画業務型裁量労働制

  1. 事業の運営に関する事項について企画、立案調査及び分析の業務
  2. 1に加えて、業務の性質上、これを遂行するには、その遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務

上記2点に該当する業務が企画業務型裁量労働制の対象となります。

いずれも労使の合意で定めた場合には、実際の労働時間数とはかかわりなく、当該合意で定めた労働時間数を働いたものとみなします。

企画業務型裁量労働制では、業種を問わず①事業の運営に関する事項の企画・立案・調査・分析の業務②業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があり、業務の遂行の手段及び時間配分の決定に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務の①②いずれにも該当する業務が対象となります。

対象とならない業務としては、経営会議の庶務などの業務や人事記録作成、給与計算、各種保険の加入・喪失、採用・研修の実施などの業務が該当します。

1カ月単位の変形労働制

1カ月以内の一定の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以下の範囲で、特例の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて働かせることができます。

要件は以下の通りです。

労使協定または就業規則等に記載必要な事項
1.変形期間の長さ(1カ月以内)と起算日
2.対象労働者の範囲
3.変形期間における各日・各週の労働時間
4.労使協定の有効期間
変形期間
変形期間は1カ月以内
変形期間における法定労働時間の総枠
変形期間中の週平均労働時間を法定労働時間以内としなければなりません。
※総枠数は以下の計算式で算出
総枠数=40時間×変形期間の暦日数/7
変形期間中の各日・各週の労働時間を特定する
変形期間内の各日・各週の労働時間を具体的に特定する必要があります。

フレックスタイム制

3か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておいて、労働者がその範囲で各日の始業・終業時刻を自ら決めて働く制度です。

要件は以下の通りです。

①就業規則により、始業・終業時刻を労働者の決定にゆだねる旨を定める

②労使協定で制度の内容を定める

②について必ず定める事項

  • 対象労働者の範囲
  • 清算期間(3か月以内)
  • 清算期間中の総労働時間
  • 標準となる1日の労働時間
  • 清算期間が1カ月を超える場合には、労使協定の有効期間

②について任意で定める事項

  • コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)
  • フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働できる時間帯)

フレックスタイム制の場合、時間外労働となる時間の算出方法が少し異なります。

時間外労働となる時間は、労使協定で定めた清算期間(3ヵ月以内)における下記の時間です。

  1. 法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えて労働した時間)
  2. 清算期間が1カ月を超える場合は、上記①のほか1カ月ごとに区分した各期間について、週平均50時間を超えて労働した時間

まとめ

労働時間の見方は労働形態によって異なります。

一般的な業務に関しては、8時間を超えるとその分残業。など比較的わかりやすいですが、そこにフレックスタイム制などが入ってくると少々ややこしく感じてしまいます。

ですが、一つ一つの制度について丁寧に理解していけば問題ありません。

時間をかけてもいいのでしっかりと理解するようにしましょう。