労働基準法について学ぶ ⑨賃金

労働基準法において、賃金とは名称を問わず、労働の対価として使用者が支払うすべてのものをいいます。

毎月支払われる基本給、諸手当のほか、支給条件が明確に示されている賞与や退職金もこれに含まれます。

また、使用者は賃金を①通貨で②全額を③毎月1回以上④一定の期日に⑤直接労働者に支払う必要があります。

これを賃金支払いの5原則といい、労働者に対して賃金が確実に支払われるように定められています。

原則例外
①通貨払い
 通貨で支払うこと
・法令、労働協約に現物支給の定めがある場合は通貨でなくても可
・労働者の同意がある場合の本人名義の口座振り込み等は可
②直接払い
 直接本人に支払うこと
労働者の「使者(本人への支払いと同一の効果を生ずる者)」への支払いは可
※「代理人(弁護士や、子の法定代理人(親)等)」への支払いは不可
③全額払い・税金や保険料など法律の定めがある場合は、それらを控除後の金額の支払いは可
・労使協定に定めがある場合に、社販、社宅費、社内預金等の控除後の金額の支払いは可
④毎月1回以上払い臨時に支給される賃金、賞与、査定機関が1カ月を超える場合の精勤手当、能率手当などは、毎月一定期日払いしなくても可
⑤一定期日払い

最低賃金

最低賃金は以下2種類があります。

地域別最低賃金都道府県ごとに必ず1つ定めがあります。
⇒その都道府県内の事業場で働く労働者、使用者すべてに適用されます。
特定(産業別)最低賃金特定の産業について設定されている最低賃金をいいます。
「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認められる産業について設定されています。

この際、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される労働者の場合は、高い方の最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。

これらはパートやアルバイトなどの全労働者に適用されるため注意が必要です。

派遣労働者には派遣先事業所(就業場所)の所在地の最低賃金が適用されます。

また、最低賃金は毎年見直しが行われるため細目にチェックしておきましょう。

割増賃金

時間外労働や深夜労働、休日労働には割増賃金の支払いが義務付けられています。

種類割増率
時間外労働原則25%以上
月60時間を超えた部分に関しては50%以上
休日労働35%以上
深夜労働25%以上

このほか、時間外労働が深夜時間帯に及んだ場合は50%以上、休日労働が深夜時間帯に及んだ場合は60%以上の支払いが必要です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できるもの

割増賃金の基礎となるのは、所定労働時間の労働に対して支払われる「1時間当たりの賃金額」です。

例えば月給制の場合、各種手当も含めた月給を、1カ月の所定労働時間数で割って1時間当たりの賃金額を算出します。

この時以下の項目は労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより基礎となる賃金からは除外することができます。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時にじ支払われた賃金
  7. 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

平均賃金

平均賃金は、次の金額を算定する際の基準となります。

休業手当使用者の責に帰すべき事由で休業させるとき、1日につき平均賃金の60%以上
解雇予告手当即日解雇の場合、平均賃金の30日分以上
年次有給休暇の賃金年次有給休暇に対する賃金の支払いを平均賃金額による、と就業規則に定めた場合
業務災害による休業補償業務災害により休業する際の休業補償等の額を計算する場合
減給制裁の制限減給制裁をする場合は、1事案につき平均賃金の半額以下、1賃金支払期の賃金総額10%以下

平均賃金は原則、直近の3ヵ月間の賃金総額(支給総額)÷直前の3か月間の総日数(暦日数)で計算されます。

※算定期間中に産前産後休業期間がある場合などの例外については計算方法が異なります。

最低保証額賃金が日給、時間給、出来高払いで定められている場合は、直前の3か月間の賃金総額(支給総額)÷直前の3か月間の労働日数×0.6で計算されます。

※賃金の一部が月給で決められている場合などについては計算方法が異なります。