採用マーケティングと採用ブランディングを連動させる方法

1. 採用マーケティングと採用ブランディングの違いを正しく理解する

「採用マーケティング」と「採用ブランディング」の違いとは何だろうか?

まず重要なのは、それぞれを明確に区別して理解することです。両者はしばしば混同されがちですが、その役割と目的は異なります。

採用マーケティング

採用マーケティングは、求職者を「集める」ための活動です。
求人広告、採用サイト、SNS、スカウトメール、説明会など、母集団形成のための施策全般が該当します。短期的な効果が求められ、KPIは応募数やエントリー数など「数値」で評価されます。

採用ブランディング

採用ブランディングは、企業の魅力や価値観を「伝え、浸透させる」活動です。
社風やビジョン、社員の働き方、成長環境などを内外に発信し、企業のイメージを確立することで「この会社で働きたい」と感じてもらう土壌をつくります。中長期的に効いてくる取り組みであり、KPIは認知度や好意度、定着率、エンゲージメントなどで測られます。

つまり、マーケティングが「量」をつくり、ブランディングが「質」を高めるという関係性にあります。
どちらか一方だけでは採用力は高まらず、両輪として機能させることが不可欠です。

2. 採用ブランディングを基盤に据える

連動させるには、まず採用ブランディングを土台に置くことが重要です。
ブランディングなくしてマーケティングを行うと、単なる「条件競争」に陥りやすく、給与や待遇面で上を行く企業に応募者が流れてしまうからです。

具体的には、以下のようなステップでブランド基盤を構築します。

  • EVP(従業員価値提案)の明文化
    自社で働く魅力や価値を、給与・待遇・成長環境・働きがい・人間関係などの観点から洗い出し、「自社ならでは」の言語化を行います。
  • ターゲット人材像の設定
    自社の理念やカルチャーにマッチする人物像(年齢、志向、キャリア観)を明確に定義します。
  • 社員の声を活用したリアルな情報発信
    採用サイトやSNSで社員インタビュー、職場風景、1日の仕事の流れなどを紹介し、「働くリアル」を伝えます。

これにより、自社に共感してくれる層に刺さるメッセージを届けやすくなり、その後のマーケティング活動の効果も高まります。

3. 採用マーケティングで「接点」を増やし、ブランド体験を設計する

ブランディングで企業の「らしさ」を固めたら、次はマーケティングで接点を増やし、ブランド体験を届ける段階に移ります。

単に広告を打つのではなく、「どの媒体で、どんなコンテンツを、どのタイミングで発信するか」を戦略的に設計することが鍵です。

  • 媒体ごとの特性に合わせたメッセージ配信
    SNSではビジュアル中心に社風や雰囲気を発信、求人サイトでは募集要項やキャリアパスを詳細に記載するなど、それぞれの役割を明確にします。
  • カスタマージャーニー型の設計
    求職者が「認知→興味→応募→内定→入社」というステップを進む中で、必要な情報を順に提供するようにします。たとえば、最初はSNSや採用ブログでライトな接点をつくり、興味を持った層を自社サイトや会社説明会に誘導して応募につなげる、といった流れです。
  • 採用広報と人事担当の連携
    コンテンツ制作を広報に任せきりにせず、人事と広報が連携し「求める人材像」に合わせた一貫したメッセージを発信します。

ブランドをベースにしたマーケティング施策を展開することで、「自社らしさ」を理解した上で応募してくれる層が増え、ミスマッチや早期離職の防止にもつながります。

4. 応募後・内定後もブランディングは続く

忘れてはならないのは、採用ブランディングは入社前だけでなく、内定後・入社後も続くということです。

せっかくブランディングとマーケティングで応募者を集めても、入社後にギャップを感じて早期離職されてしまっては意味がありません。

  • 内定者フォローでブランド体験を継続
    内定者懇親会や先輩社員との交流、社内報や動画コンテンツの配信などで、企業文化や価値観を実感してもらいます。
  • オンボーディングで文化の浸透をサポート
    初期研修やメンター制度などを通じて、理念や行動指針を共有し、職場への定着を支援します。
  • 社内エンゲージメント向上施策
    経営方針の共有、社内表彰制度、キャリア支援面談などを通じて、社員が「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりを行います。

こうした取り組みは、社内の従業員を「社外へのブランド発信者」に育てる効果もあり、口コミやSNSでの好意的な発信につながります。

5. 採用ブランディングとマーケティングを連動させるための運用ポイント

これまで述べてきたように、採用ブランディングは中長期的に企業の魅力を浸透させる取り組みであり、採用マーケティングは短期的に応募・母集団を形成するための施策です。
どちらも単体では限界があり、両輪として連動させることで初めて相乗効果が生まれます。しかし現実には、これらが部署ごとに分断され、個別に動いているケースが少なくありません。

ここでは、ブランディングとマーケティングを同じ戦略上に並べ、一体的に機能させるための運用ポイントを解説します。

① 共通KPIの設定:部門横断で目標を「一つ」にする

ブランディングとマーケティングが分断される最大の理由は、「追っている目標が違う」ことにあります。
たとえば広報は「認知度向上」、採用担当は「今期の採用人数確保」、現場マネージャーは「即戦力確保」といった具合に、ゴールがバラバラになりやすいのです。

この状況を防ぐには、**部門横断で共有する共通KPI(指標)**を設定することが不可欠です。

  • 例:
     ・「25歳以下のエンジニア応募者数を前年比150%に」
     ・「応募者の内定承諾率を5ポイント向上させる」
     ・「入社1年後の定着率80%以上」

これらは短期・中長期どちらの視点も含むため、広報・人事・現場が同じ方向を向いて取り組めるようになります。
またKPIを数値化することで、定性的になりがちなブランディング活動も評価・改善がしやすくなります。

② データに基づいた効果検証:施策のPDCAを回す

ブランディング施策は「効果が見えづらい」と言われがちですが、測定できる指標を設計しておけば効果は定量的に把握できます

たとえば以下のようなデータを定期的に収集・分析します。

  • 媒体別の応募数・応募者属性
  • 応募から内定までの通過率
  • 採用単価(1人当たりコスト)
  • 入社後の定着率・活躍率
  • 自社コンテンツ(採用サイトやSNSなど)の閲覧数・エンゲージメント率

これらをダッシュボードなどで可視化することで、施策ごとの費用対効果を明確にし、次の施策に活かすことができます。

たとえば「採用サイトで企業文化を伝えるコンテンツを強化した結果、サイト経由応募者の定着率が15ポイント上昇した」といった具体的な分析ができれば、ブランディング投資がROI向上につながることを社内に示す材料にもなります。

③ 短期と中長期のバランスをとる:両輪を止めない仕組みづくり

多くの企業が陥るのが、「今期の採用目標を埋める」ことに追われ、中長期的なブランディング施策が後回しになるという状態です。
しかしこのような“対症療法型”の採用活動は、将来的に採用単価の高騰・人材定着率の低下を招きます。

理想は、短期と中長期を並行して動かす仕組みを持つことです。

  • 短期的施策:求人広告・スカウト・人材紹介などで今期の採用人数を充足
  • 中長期的施策:オウンドメディアやSNSでの情報発信、インターンや職場体験企画、社員アンバサダー制度などで将来の母集団を形成

重要なのは、中長期施策を「余裕があるときにやる」ではなく、常に回し続ける体制をつくることです。
これにより、将来的に「求人広告に頼らなくても応募が集まる」状態が生まれ、採用コスト削減と定着率向上の両立が可能になります。

④ 経営層を巻き込んだ全社的な推進体制

さらに忘れてはならないのが、経営層のコミットメントです。
採用ブランディングとマーケティングの連動は、単なる人事施策ではなく、経営戦略そのものに直結する活動です。

経営層が明確に「どんな人材を採り、どんな組織をつくるか」というビジョンを示し、人事・広報・現場が一体となって動くことで、一貫性のある採用メッセージが社内外に浸透します。
これが結果的に、応募者にとっても「一貫した企業像」として伝わり、入社後のミスマッチ防止にもつながります。

まとめ

採用ブランディングと採用マーケティングを連動させるには、
①共通KPIの設定 → ②データに基づいた効果検証 → ③短期と中長期施策の両立 → ④経営層の関与
という流れで「一体的な運用体制」をつくることが不可欠です。

両者を分断せず連動させることで、短期的な採用力と中長期的な企業魅力度を同時に高めることができ、結果的に人材獲得競争で優位に立つことができます。

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