求人広告費の相場とROIを高める考え方
はじめに
企業にとって「採用活動」は経営の根幹に直結する重要課題です。
しかし、採用市場の競争が激化するなかで、「求人広告に多額の費用を投じても、思うように応募が集まらない」「採用してもすぐ離職してしまい、投資対効果が見えにくい」といった課題を抱える企業も少なくありません。
そこで今回は、求人広告費の最新相場を整理しつつ、採用のROI(投資対効果)を最大化するための実践的な考え方を解説します。
1. 最新データで見る求人広告費の相場
新卒・中途・アルバイト別の平均広告費
- 新卒採用
2024年の平均的な求人広告費は全体で約161.7万円。上場企業では約606.7万円、非上場企業では約123.7万円と、企業規模によって大きな差があります。 - アルバイト採用
2024年の平均費用は約23.5万円で、2022年と比べてわずかに増加しています。一方、求人検索エンジンの平均広告費は、約12.6万円で、むしろ減少傾向にあります。
中途採用の費用実態
採用手法別の費用
マイナビ調査によると、中途採用にかける総予算は770.4万円、実績は629.7万円となっており、人材紹介(実績400万円)、ダイレクトリクルーティング(178万円)、求人広告(142万円)などの分類も明らかになっています。
1人当たりの採用広告費(職種別)
全職種平均で約33.2万円。職種別に見ると、公共サービスが52.6万円ともっとも高く、IT・エンジニアは38.3万円、販売・フードは27.3万円など、職種で費用に差があります。
全体の広告費相場
中途採用にかかる年間の求人広告費は約184万円、1人あたりの採用コストは約103万円という目安も報告されています。
採用手法別の費用
マイナビ調査によると、中途採用にかける総予算は770.4万円、実績は629.7万円となっており、人材紹介(実績400万円)、ダイレクトリクルーティング(178万円)、求人広告(142万円)などの分類も明らかになっています。
2. 採用を「投資」として捉える考え方
ROIとは?
採用活動は「コスト」ではなく「投資」として捉えるべきだ、という考え方が近年広まっています。
採用ROI(Return on Investment)は、かけたコストに対してどれだけの成果を得られたかを数値で評価する指標です。
ここでいう成果とは、単なる入社数ではなく「入社後に活躍しているか」「どれだけ長く定着しているか」「事業成果にどれほど貢献しているか」といった点まで含めて考えることが重要です。
計算式としては「成果からコストを引き、コストで割る」という形で表せますが、実務上は必ずしも単純な数値で割り切れません。なぜなら、定着率やエンゲージメント、採用ブランド力など数値化が難しい要素も、企業の成長に大きく影響を与えるからです。それでもROIの視点を導入することで、「採用が単なる費用消化ではなく、将来にリターンをもたらす投資である」という共通認識を社内に浸透させやすくなります。
ROI最大化の3つの戦略
1. 採用コストの効率化
ROI向上の第一歩は「無駄な支出を抑えること」です。例えば、媒体に依存しすぎず、自社求人サイトを充実させれば長期的に広告費を削減できます。
また、オンライン面接や適性検査の自動化ツールを導入することで、面接官の工数を減らし、採用プロセス全体を効率化できます。こうした施策は「単なるコスト削減」にとどまらず、スピード感ある採用活動を可能にし、結果として優秀な人材を逃さないことにつながります。
2. 応募数・応募質の向上
コストを下げるだけではROIは高まりません。重要なのは「より多く、より質の高い応募者を集める」ことです。そのためには、まず自社が本当に求める人材像を明確化する必要があります。いわゆるペルソナ設計を丁寧に行い、ターゲット層が共感する言葉や情報を求人原稿に反映させることが肝心です。さらに、他社との差別化を図るために「働く環境」「キャリアパス」「企業文化」などを具体的に発信することで、マッチ度の高い応募者を集められるようになります。
3. 内定後の定着支援
ROIを考える際に見落とされがちなのが「採用後の定着」です。せっかく採用に成功しても、入社後すぐに辞めてしまえばROIは大きく下がります。そのため、内定者フォローや入社後のオンボーディングを丁寧に行い、入社前後のギャップを最小限に抑えることが重要です。
具体的には、内定者懇親会や定期的な面談で接触頻度を高める、メンター制度を導入するなど、安心して働ける環境づくりが求められます。こうした定着支援が、採用ROIを大きく押し上げる要素になるのです。
つまり、採用ROIを高めるためには「コスト削減」「応募質向上」「定着支援」の三つを同時に進める必要があります。どれか一つに偏るのではなく、バランスよく施策を実行することが、長期的に安定した採用成果をもたらすポイントです。
3. ROIを高めるための実践ステップ
ステップ1:費用を「見える化」する
採用ROIを高めるための第一歩は、採用活動にかかっている費用を正確に把握することです。多くの企業が「求人広告費」や「人材紹介料」といった外部コストには注目しますが、実は内部に隠れたコストも見逃せません。
外部コストには、ダイレクトリクルーティングや求人広告の掲載料、人材紹介会社への成功報酬などが含まれます。これらは契約書や請求書で確認できるため比較的把握しやすい項目です。
一方で内部コストは可視化が難しく、ROIを測定する際に見落とされがちです。例えば、面接に参加する社員の人件費、採用ツールやATS(応募者管理システム)の利用料、説明会やインターンシップの運営費などが挙げられます。これらを「採用にかかったコスト」として計上しないと、実際よりもROIを高く見積もってしまうリスクがあります。
まずは採用プロセスを細分化し、どこでどのようなコストが発生しているのかを洗い出すこと。ここを丁寧に行うことで、改善すべきポイントや投資を集中すべき領域が見えてきます。
ステップ2:媒体別の戦略的活用
次に重要なのが、採用媒体を戦略的に使い分けることです。採用チャネルにはそれぞれ特徴とコスト構造があり、目的やターゲットによって最適な組み合わせを選ぶ必要があります。
例えば、ハローワークは無料で利用できるためコストを抑えたい企業に有効ですが、情報が埋もれやすくターゲットを絞った採用には不向きな場合があります。
求人検索エンジンは月10万〜40万円程度と比較的低コストで広範囲にリーチできますが、応募者の質は媒体や原稿次第で大きく変わります。
一方、自社採用サイトは初期費用として100万〜300万円程度かかるケースが多いものの、自社の魅力を存分に発信でき、長期的にみれば広告費削減につながります。さらに、検索エンジン広告やSNS広告を併用することで、ターゲット層に直接アプローチすることも可能です。
大切なのは「どの媒体が安いか」ではなく「どの媒体でどの層にリーチし、結果としてROIが高まるか」という視点で選ぶことです。
ステップ3:成果を測定→改善する
採用ROIは一度計測して終わりではありません。
定期的にデータを収集し、KPIとして設定した指標をモニタリングし続けることで改善サイクルを回していく必要があります。
測定すべき主な指標には、応募数、面接通過率、内定率、入社率、そして採用単価などがあります。これらを時系列で追うことで、どのプロセスに課題があるかを明確にできます。例えば「応募数は多いが面接通過率が低い」場合は、ターゲティングや求人票の内容に問題がある可能性が高いでしょう。「内定は出しているのに辞退率が高い」場合は、面接後のフォロー体制や条件提示の仕方に改善余地があります。
重要なのは、データを集めるだけでなく、それをもとに具体的な改善策を打ち出し、次の採用活動に反映することです。つまり、採用におけるPDCAサイクルを確実に回すことで、長期的にROIを高めることができるのです。
4. 採用投資の未来に向けて
採用市場は今後ますます変動が激しくなり、求人広告費は右肩上がりに推移すると予測されています。そのような環境下で競争優位性を保つためには、単に「応募数を増やす」だけでは不十分です。
応募者の質を高め、入社後の定着率や活躍度合いまで視野に入れて成果を最大化することが重要になります。
そのために求められるのは、採用を単なる経費ではなく「未来への投資」と捉える視点です。費用を正確に可視化し、媒体やチャネルを戦略的に使い分け、さらにデータをもとに成果を検証・改善する。こうしたサイクルを継続的に回すことで、限られた予算でもROIを高め、持続的な人材確保につなげることができます。
つまり、これからの採用活動において鍵となるのは「戦略性」と「改善の仕組み化」です。この両輪を確立できる企業こそ、変化の激しい労働市場において安定的に優秀人材を確保し、事業成長を支え続けられる存在になるでしょう。
採用にお悩みの企業さまへ
私たちは、求人広告の掲載や人材紹介といった単発的な支援にとどまらず、「採用を投資として捉え、ROIを高める仕組みづくり」を重視したサポートを行っています。
- 採用コストの見える化
- 媒体の選定と最適活用
- 応募数・応募質の向上
- 内定後の定着支援
これらを一貫して支援することで、限られた予算でも最大限の成果を出せる採用体制を整えるお手伝いをしています。
「求人広告を出しても効果が見えにくい」「応募はあるのに定着しない」
そんな課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。貴社の採用を単なるコストではなく、未来への確かな投資へと変えるために、私たちが伴走いたします。
出典一覧
- 採用単価・採用ROIに関する調査・コラム
- 採用ROI最大化の戦略
- 求人広告費の相場と媒体別の特徴
- 採用チャネル活用とコスト目安