副業解禁が採用市場に与える影響――変革の波に乗る企業の戦略とは

はじめに

2018年の本格的な副業解禁以降、日本の働き方は着実に変化しています。

企業側も個人も、もはや「一社専属の終身雇用」に固執する時代ではなくなりました。ここでは、副業解禁が採用市場においてどのような影響を与えているのかを、最新のデータをもとに整理し、その流れの中で企業がどう対応すべきかをまとめます。


1. 副業解禁が進む中で、現実は少しずつ変化

パーソル総合研究所によると、2023年には企業の60.9%が副業を容認し、副業意向を持つ正社員は40.8%に達しています。副業を制度として認めている企業は増えていますが、実際に副業をしている社員の割合は8.4%にとどまり、実施率はあまり伸びていないのが現状です。

また、日経によれば副業解禁から5年が経過しましたが、正社員の副業実施率は横ばいか減少傾向にあり、普及にはまだギャップがあることも指摘されています。

こうした状況から見えてくるのは、「制度として副業を認める企業は多くなったが、現場での実践は慎重」という現実です。

2. 採用市場に与える構造的な変化

● 労働市場の逼迫と副業ニーズの拡大

OECDや日銀の分析からも明らかなように、日本は深刻な労働力不足に直面しています。特に地方や中小企業では、その課題感がより強く、深刻です。

こうした背景で副業は、企業にとっては「柔軟な人材確保」、従業員にとっては「収入源の多様化」に対する一つの回答として注目されています。

● 副業によるスキル・経験の多様化

副業を通じて従業員が新たなスキルや人脈を獲得し、本業の成果やモチベーション向上につながるケースも増えています。副業先で得た知見を、企業のイノベーションに活かしている例も少なくありません。

● 採用マッチングの変化

副業プラットフォームやスキルマーケットの発展により、個人が自らのスキルを発信し、複数企業とつながりやすくなったため、採用市場では従来とは異なる候補者との接点・出会い方が生まれています。


3. 企業が留意すべき課題と対応策

(1)選考時の慎重な見極めが必要に

厚生労働省の報告によれば、副業・兼業人材を採用する際には、「本業と副業の両立が可能か」「業務への適性」「文化適合性」といった視点を丁寧に選考段階で確認する取り組みが増えています。

(2)職場環境と評価制度の整備を

副業者を特別扱いせず、コミュニケーションや評価制度を本業社員と公平に設計することが求められます。例えば、1on1面談や社内イベントへの招待など、組織とのつながりを補う工夫がされています。

(3)リスクマネジメントの必要性

副業を認める企業でも、情報漏洩、過重労働、独立・離職リスクなどの懸念は依然として存在します。そのため、副業希望者とは制度整備や就業ルールを明確にしておくことが重要です。


4. 採用戦略として副業対応を組み込むことの意義

副業解禁の流れは、単なる労働慣習の変化を超え、採用戦略においても以下のような効果をもたらす可能性があります。

  • 母集団の拡充:パラレルキャリアを志向する人材層にリーチしやすくなる。
  • 即戦力獲得:副業経験を通じて高いスキルや専門性を持つ人材に出会える。
  • 組織の魅力化:柔軟かつ挑戦を応援する企業としての採用ブランド向上につながる。

5. 未来を見据えた企業のアクションプラン

項目施策案
副業制度の設計社内規定や労働時間調整ガイドラインの策定
選考プロセス面接・ヒアリングで「複業との両立可否」「文化適合性」を評価
継続フォロー情報共有・社内参画促進のための施策(1on1、参加型イベント)
リスク管理情報漏洩防止・健康管理ルール・就業規則の整備

まとめ:副業時代の採用戦略は“柔軟性×信頼性”が鍵

副業解禁という労働市場の変革は、ゆえに採用市場にとっても転機となっています。「柔軟な働き方を提供できる企業」は、変化を求める優秀な人材から注目を集めます。しかしそれに伴う課題も無視できません。

そのためには、「制度設計」「人材見極めの精度」「組織の受け入れ体制」「リスク管理」の4つをバランスよく進めることが、今後の採用優位性を築く鍵となるでしょう。


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出典一覧

Job総研「2025年 副業・兼業の実態調査」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000258.000013597.html

DODA「副業の実態調査」

https://doda.jp/guide/fukugyo/

パーソル総合研究所「第三回 副業の実態・意識に関する定量調査」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000111116.html

ジョブズリサーチセンター「フルタイム就業者の副業・兼業動向」

https://jbrc.recruit.co.jp/data/data20250401_3714.html

パーソル総合研究所コラム「副業推進がもたらす労働市場へのインパクト」

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202411150001/

トランスチャーチ「副業は増えているのか? “多様で柔軟な働き方”の幻想」

https://www.transtructure.com/hr-data-analysys/diversity/p7471/

Business Research Lab「日本における副業の実態と意義」

https://www.business-research-lab.com/250603-2/

JIL「副業者の就労に関する調査」

https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/245.html

note「副業を解禁する大手企業が急増中」

https://note.com/nb_biztech/n/n97941250d6df