AI・DX人材の需要と採用戦略 〜日本の現状と人材会社の役割〜
はじめに
近年、日本企業のあらゆる業界で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が重要な経営課題として位置づけられています。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」では、老朽化した基幹システムの維持と人材不足がもたらす経済的損失は最大12兆円にのぼると予測されており、DX推進の遅れが国家的なリスクとされています。
このような背景のもと、AIやデータ活用に強みを持つ「DX人材」への需要は急速に高まっています。しかし、実際には圧倒的な人材不足が続いており、採用戦略の再構築が求められているのが現状です。
1. 日本におけるAI・DX人材需要の高まり
企業の9割以上がDXを推進
HRプロの調査によると、国内企業の9割以上が「DXを推進している」または「推進を検討中」と回答しています。しかし、その一方で「必要な人材が不足している」という声が6割を超えており、意欲と人材確保のギャップが顕著です。
人材不足の実態
IPA(情報処理推進機構)のレポートでも、DX推進を担う人材の不足が深刻化していることが報告されています。特にデータ分析、AI開発、クラウド、セキュリティ分野で専門人材が足りず、企業の約7割が「育成・採用の両面で困難」と回答しています。
将来的な不足規模
三菱総研は「2035年にDX推進人材が約86万人不足」するとの試算を発表しています。これは単なる一時的不足ではなく、長期的に継続する構造的な人材不足を意味しています。
2. 採用における課題
中小企業の採用難
大手企業が高待遇でAI・DX人材を採用するなか、中小企業や地方企業は採用競争に不利な立場に置かれています。レバテックの調査によれば、DX人材不足を実感している企業は全体の6割以上にのぼり、その多くは採用に苦戦しているといいます。
人材要件の不明確さ
求人情報では「DX人材募集」と掲げても、具体的にどのようなスキルや経験が求められるのかが曖昧なケースが目立ちます。その結果、応募者が自分に適しているか判断できず、採用のミスマッチにつながりやすいケースも多くみられます。
質的不足
Gartner Japanの調査では、日本企業の31.9%が「質的なIT人材不足」を課題として挙げています。単に人数が足りないだけでなく、求めるスキルレベルと実際の候補者のギャップが問題となっているのです。
3. 企業が取るべき採用戦略
(1)人材要件の明確化
「AI人材」や「DX人材」と一括りにするのではなく、業務内容を細分化し、求めるスキルセットを明示することが重要です。
例:
- データサイエンティスト → Python・SQL・機械学習モデル構築
- DX推進担当 → プロジェクトマネジメント・業務プロセス改善・ITリテラシー
(2)多様な採用チャネルの活用
求人広告だけでなく、自社採用サイトや専門メディア、SNS発信、リファラル採用などを組み合わせることで、候補者へのリーチを広げられます。とくにDX人材はコミュニティ活動や勉強会への参加が活発であるため、オフラインイベントやウェビナーを通じたアプローチも効果的です。
(3)スキルベース採用へのシフト
学歴や職歴よりも「何ができるか」に焦点を当てる採用手法が必要です。レバテックキャリアの調査では、AI人材の需要は2030年に約24.3万人に達すると予測されており、限られた母集団から採用するには「スキルマッチ」が最も現実的です。
(4)採用後の育成を前提とする
人材不足の中で完璧な人材を採用するのは困難です。採用段階ではポテンシャルや学習意欲を重視し、入社後に教育プログラムやOJTでスキルを伸ばす仕組みを整えることが成功の鍵となります。
(5)採用ブランディングの強化
デロイトの調査によると、多くの企業が「デジタル人材育成に積極投資している」と回答しており、候補者は「学べる環境」を重視しています。企業文化やキャリアパスを具体的に打ち出すことが採用競争力の差別化になります。
4. 人材会社にできる支援
人材会社は、単なる「人材の供給役」ではなく、企業のDX推進をともに実現するパートナーであることが求められています。
- 求人票作成の段階から人材要件の整理をサポート
- 候補者との接点を広げる採用チャネルの提案
- 採用と育成をつなぐ長期的な人材戦略の設計
- 先進事例や市場データの共有による意思決定の支援
こうした包括的な取り組みを行うことで、企業の「DX人材戦略」を強力に後押しできます。
まとめ
AI・DX人材の需要は今後さらに高まり、供給不足は長期的に続くと予測されています。
日本企業がこの難局を乗り越えるには、採用要件の明確化・多様なチャネル活用・スキル重視・採用後の育成・ブランディング強化といった複数の戦略を組み合わせることが不可欠です。
そして人材会社は、こうした戦略を伴走しながら支援する存在として、企業と候補者の架け橋となり、DX推進の加速に貢献する役割を担っています。
企業の皆さまへ
AI・DX人材の採用は、一過性の取り組みではなく、企業の未来を左右する戦略投資です。
しかし、「どのような人材を求めるべきか」「どのチャネルで採用すればよいか」「採用後にどう育成するか」といった課題に直面する企業は少なくありません。
当社は、最新の採用市場データと豊富なマッチング実績をもとに、求人要件の整理から母集団形成、採用プロセス設計、定着支援までを一貫してサポートしています。
特にAI・DX分野に強いネットワークを持ち、即戦力人材の紹介はもちろん、将来性のある人材を採用・育成する長期的な視点での支援が可能です。
「自社に合ったAI・DX人材をどう採用すべきか」
「限られた予算で効果的に採用を進めたい」
そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度当社にご相談ください。
貴社のDX推進に寄り添い、最適な人材戦略を共に描いてまいります。
出典
- IPA「DX動向2024調査」 https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/dx-talent-shortage.html
- HRプロ「9割以上の企業がDXを推進中」 https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=3616
- 三菱総研「2035年にDX推進人材86万人必要」 https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20250627.html
- レバテック「DX人材不足は6割以上」 https://levtech.jp/partner/guide/article/detail/384/
- Gartner Japan「質的なIT人材不足が31.9%」 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20240801
- レバテックキャリア「AI人材需要2030年に24.3万人」 https://career.levtech.jp/guide/knowhow/article/181006/
- デロイト トーマツ「デジタル人材育成に関する実態調査2023」 https://www.deloitte.com/jp/ja/services/consulting/research/digital-hr-development-survey2023.html