採用ブランディングで伝えるべき3つの「価値」

はじめに

採用活動において、応募者は求人票や企業HPだけで判断するわけではありません。

SNSや口コミ、社員の声など、多様な情報を組み合わせて「自分が働くイメージ」を描こうとします。つまり、ただ待遇や仕事内容を並べるだけでは心を動かせず、応募にはつながりにくいのです。

そこで重要になるのが「採用ブランディング」です。企業の存在意義や働く魅力を体系的に発信し、応募者に「ここで働きたい」と感じてもらう仕組みをつくる取り組みです。その核となるのが、応募者に届けるべき3つの『価値』を明確にすることです。

本記事では、

  1. 事業価値
  2. 社会的価値
  3. 個人価値(キャリア価値)


という3つの軸に沿って、採用ブランディングにおいて伝えるべきポイントを解説します。

1. 事業価値 ―「何をしている会社か」を超えて伝える

まず最初に伝えるべきは、企業の「事業価値」です。単に「自動車部品をつくっている会社です」「人材サービスを提供しています」といった説明にとどまらず、どんな顧客課題を解決し、どのように社会に役立っているかまで具体的に言語化することが大切です。

事業価値を伝えるポイント

  • 市場でのポジション:競合と比べてどんな強みを持っているのか
  • 提供している価値:顧客にどんな成果をもたらしているのか
  • 未来のビジョン:今後どの方向に事業を拡大しようとしているのか

事例

例えば、製造業の中小企業が「自動車部品を製造しています」とだけ伝えるのでは、応募者には響きにくいでしょう。しかし「私たちは安全性を支えるブレーキ部品を供給し、国内外で数百万人の命を守っています」と伝えれば、応募者のイメージは大きく変わります。

事業価値は「仕事の意義」を端的に表すもの。ここが弱いと、「なんとなく規模が小さい会社」「安定しているかわからない会社」と見られ、母集団形成に苦戦します。

2. 社会的価値 ―「存在意義」を示すストーリー

次に重要なのは「社会的価値」です。これは、事業を通じて社会にどう貢献しているかを示すもの。いわば「企業の存在意義(パーパス)」です。

社会的価値を伝えるポイント

  • 社会課題とのつながり:高齢化、環境問題、地域活性化などとの関係性を明確にする
  • 持続可能性への姿勢:SDGsや脱炭素、ダイバーシティなど、長期的な価値創出の姿勢
  • 社会からの評価:受賞歴、顧客からの評価、地域での活動実績

事例

地域密着型の企業であれば「単なる食品メーカー」ではなく、「地元農家と連携し、6次産業化で地域経済を支える存在」と伝えることで、応募者の心に響きやすくなります。

特に若い世代は「社会貢献」「やりがい」を重視する傾向が強いため、社会的価値をきちんと打ち出すことは採用競争力を高める大きな武器になります。

3. 個人価値(キャリア価値) ―「自分にとっての意味」を描かせる

そして最後に最も重要なのが「個人価値」、つまり応募者がその会社で働くことで得られるキャリア的・人生的な価値です。

個人価値を伝えるポイント

  • 成長機会:どのようなスキルや経験を積めるか
  • キャリアパス:どんな未来のキャリアが描けるか
  • 働きやすさ:柔軟な働き方や福利厚生、カルチャーの特徴

事例

例えばIT企業であれば「エンジニアとして大規模な開発案件に関わり、将来はプロジェクトマネージャーを目指せる」といった具体的な成長ストーリーを示すことが効果的です。

応募者は「自分の未来がここにあるか」を最も重視します。ここを伝えきれないと、いくら事業が立派でも「自分に合う職場ではない」と判断されてしまいます。

3つの価値をどう統合するか

採用ブランディングでは、事業価値・社会的価値・個人価値をそれぞれバラバラに伝えるのではなく、一貫したストーリーとして統合することが鍵です。

例えば、

  • 事業価値:最先端の技術で物流業界の効率化を実現している
  • 社会的価値:環境負荷を減らし、持続可能な社会に貢献している
  • 個人価値:社員は専門スキルを磨きながら、グローバルに活躍できる

といった形で、3つをセットで語ることで「この会社は意義があり、社会に必要とされ、自分の成長にもつながる」と応募者に強く印象づけられます。

採用ブランディング成功のポイント

3つの価値を整理できたとしても、それをどう応募者に届けるかによって成果は大きく変わります。単に理念や制度を並べるだけでは十分ではありません。ここからは、3つの価値を効果的に発信するための「採用ブランディング成功のポイント」を整理します。

  1. 言語化の徹底:事業・社会・個人それぞれの価値を、感覚的な言葉ではなく数値やエピソードで語ることで説得力が高まります。
  2. 媒体ごとの最適化:事業価値はHPで詳しく、社会的価値は動画やイベントで共感を呼び、個人価値はSNSや社員インタビューでリアルに伝える、など媒体ごとに強調点を変えると効果的です。
  3. 現場社員の声を活用:3つの価値を経営層が語るだけでなく、社員自身の言葉として発信することで応募者に「自分ごと」として伝わりやすくなります。
  4. 中長期的な視点:価値の発信はすぐに成果が出るものではありません。特に社会的価値や個人価値は積み重ねが信頼を生み、応募者の心に定着します。

まとめ

採用ブランディングで伝えるべき「3つの価値」――事業価値・社会的価値・個人価値――は、単なる企業紹介を超えて、応募者に「ここで働く意味」を感じさせるための核です。

  • 事業価値で「何をしているか」だけでなく「なぜ必要か」を伝える
  • 社会的価値で「企業の存在意義」を示す
  • 個人価値で「自分の未来像」を描かせる

これらを一貫したストーリーで伝えられた企業は、単に応募者数を増やすだけでなく、定着率の高い人材を惹きつけることができます。短期的な採用マーケティングと組み合わせ、中長期的に「選ばれる企業」へと進化していくために、まずは自社の3つの価値を整理し、磨き上げて発信していくことが重要です。

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